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「あの約束……覚えてる?」

ずっとずっと気になっていたこと。
初恋の男の子との大切な約束。
私は8年経っても忘れていない。
あの夕暮れの並木道でかわした約束があったから、
私は隆くんと会えなかった8年間を我慢できた。辛いことも我慢できた。
そして今、私は隆くんの部屋で、大好きな隆くんに抱きついている。

「……覚えてる?」

もう一度、尋ねる。
声が震えているのが自分でもわかる。
不安で不安でしかたがない。
急に、怖くなった。
答を聞くのが怖くなった。

「ごめんなさい、こんな夜中に変なこと聞いて」

だから、私は隆くんの部屋から逃げた。


それが、私が隆くんと一緒に暮らし始めた最初の夜。